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9価HPVワクチンの定期接種化について


厚労省でHPVワクチンについての活発な審議が続いており、産婦人科医としては大変嬉しく思います。

2022年8月4日の第19回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会では、

・9価HPVワクチン

・男性へのHPVワクチン投与

が対象になりましたので少しまとめます。ここでは、9価ワクチンについてです。

 

今回の審議会では、9価HPVワクチンの定期接種化が科学的に問題ないとする結論がまとめられました!

今後、開始時期や対象、回数などが具体的に決まっていくそうです。

 

前回の審議会では、

*9価 HPV ワクチンは4価と比較して HPV6、11、16、18 型に対して免疫原性(血中抗体価の上昇など)は劣ることなく、さらに4価ではカバーできないハイリスク遺伝子型についても有効であること

*9価 HPV ワクチンは4価と比較して接種部位の症状の発現は多いものの、全身症状は同程度であること

*9価 HPV ワクチンは4価と比較して、接種費用が高くても、費用対効果に優れていること

から、定期接種化への話が進んでいました。

前提として、日本での子宮頸がんの現状を改めてお示しします。

*日本の子宮頸がんの患者数は年間 11,012 例(2017 年全国がん登録)、死亡者数は 年間 2,871 人(2018 年人口動態統計)

*年齢調整罹患率・死亡率は、諸外国が減少している中、日本は高い水準にあります。

*20 代後半から 40 代がピーク

*女性のがん全体の3%で、20 代では最多、30 代では乳がんに次いで多いです。前がん病変のCIN3 の段階で発見されることも多いです。

 

【ヒトパピローマウイルス( human papillomavirus: HPV )感染】

HPV 感染しただけでは、抗 HPV 抗体価はほとんど上がりません。

HPV感染して病変が発生するまで時間がかかりますが、その潜伏感染の状態では HPV 抗原はほとんど産生されないため、免疫誘導による自然の抗体価上昇は期待できません。

ワクチン接種のみが、抗HPV抗体価の上昇を期待できると考えられています。

日本人で子宮頸がんにかかった方が感染している HPV 遺伝子型は、多い順に16、18、52、58、その他ハイリスク群です。

前がん病変のCIN3にかかった方が感染しているHPV 遺伝子型は、多い順に16、52、58、31、18、33です。

子宮頸がんの方が感染しているHPV遺伝子型は16, 18が60-70%を占めており、9価 HPV ワクチンの標的である 16、18、31、33、45、52、58 型の合計が、80-90%を占めています
CIN3の方が感染しているHPV遺伝子型は16, 18が40-50%を占めており、9価ワクチンの標的である16、18、31、33、45、52、58 型の合計が、80%を占めています

今後の対象はどうなるのでしょうか。

9価が定期接種になるまでに他のHPVワクチンを打っていた方やキャッチアップはどうなるのでしょう。

また、男性もそろそろ対象になってほしいです。

次回のブログでは、今回の審議会でもあがった男性のHPVワクチン接種について触れます。

 

 

HPVワクチンにつきましてはQ&Aに今までのブログをまとめてありますので、ご参照ください。

                           
記事監修院長 杉森 弥生

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記事監修村川 裕子

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