ブログ
Blog
Blog
ホルモンは、様々な臓器で作られ、体の内側で色々な働きを調整する物質です。エネルギーの代謝や骨や筋肉の成長、血圧、気分などもホルモンの影響を受けています。「インスリン」や「アドレナリン」もホルモンのひとつです。現在、ヒトでは100種類以上のホルモンが発見されています。ごく少量で効果が出るため、そのわずかな変動によって大きな影響が現れます。
「女性ホルモン」は、女性の生殖器である卵巣で生成されて血液内に分泌されるホルモンです。血液の流れに乗って全身をめぐり、様々な影響を及ぼします。子宮も女性特有の生殖器ですが、子宮からは女性ホルモンは出ていません。ですので、子宮だけを手術で摘出しても、女性ホルモンには影響ありません。女性ホルモンには「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類があります。エストロゲンは、妊娠の準備(妊娠に至らない場合は月経の準備に相当します)や女性らしい体づくり、プロゲステロンは妊娠の維持という役割があります。
【月内変動】
約28日間の周期で訪れる月経は、女性ホルモンの変動によって調整されています。
月経初日から約2週間かけて左右の卵巣で1つの卵胞が約20mmに発育すると、卵胞からエストロゲンがたくさん分泌されて下垂体のLH(Luteinizing Hormone:黄体形成ホルモン)の濃度が急激に高まり(=LHサージ)、卵子が成熟して「排卵」します。
排卵後の卵胞は黄体となり、プロゲステロンとエストロゲンを分泌します。プロゲステロンは厚くなった子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態にします。
受精卵が着床しなかった(=妊娠しなかった)場合、黄体は10日程度で白体となり、エストロゲンとプロゲステロンが減少します。すると、厚くなった子宮内膜は剥がれて排出されることで月経が起こります。
女性ホルモンの働きは、妊娠や月経に関わることだけではありません。
エストロゲンは、丸みをおびた女性らしい体を作ったり、はりのある肌を保ったり、骨密度の減少(骨粗鬆症)を予防したりします。プロゲステロンは、妊娠の成立・継続に欠かせないホルモンですが、むくみやすくなったり、たくさん食べたくなったり、眠くなったりすることに関連していると考えられています。主観的な体調のコンディションと月経周期との関連では、月経前後や月経直後よりも、月経後数日が最も調子が良いと答える方が多いです。
このホルモンの変動は月経前症候群や月経に関する悩みに関連します。これらは昨今問題視されてくるようになりました。経済産業省のアンケートでは、女性従業員の約5割が女性特有の健康課題などにより職場で困った経験があると回答したそうです。その多くを占めるのが月経痛や月経前症候群によるもので、女性特有の月経随伴症状などによる社会経済的負担は推計 6,828億円で、そのうち労働損失は71.9%で4,911億円と試算されています。(Tanaka E, Momoeda M, Osuga Y et al. J Med Econ 2013; 16(11): 1255-1266)
女性ホルモンの分泌量は、年代によっても変動します。
思春期(8〜9歳ごろから17〜18歳ごろまでの間)が近づくとエストロゲンの分泌が増加しはじめ、乳房が発育し、陰毛の発生、身長の増加を経て初経を迎えます。
その後女性ホルモンが最も安定する成熟期が20~30代で、妊娠に最も適した年齢です。子宮筋腫や子宮内膜症といった、女性特有の疾患が現れてくることがあります。
閉経(日本人の平均閉経年齢は50歳)の前後5年を合わせた10年間を更年期と言い、女性ホルモンが不安定になり、体や気持ちに不調が起こるようになります(更年期障害)。
更年期が過ぎますと老年期となり、女性ホルモンが欠乏することによる影響が現れます。骨密度が低下(骨粗鬆症)したり、代謝が落ちて太りやすくなったり、動脈硬化になりやすかったりします。
以上のように女性ホルモンは全身に作用していることから、その変動はそれぞれの年代ごとに体と気持ちに大きな影響を及ぼします。そのときどきのご自分に合わせたケアや対策が必要とされます。
当院には女性ヘルスケア専門医が在籍しております。どうぞお気軽にご相談ください。