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妊娠高血圧症候群


妊娠高血圧症候群(Hypertensive Disorders of Pregnancy ; HDP)とは、妊娠中にお母さんの血圧が上がり、ときには尿に蛋白がでる(たんぱく尿)病気です。以前は“妊娠中毒症”と言われていました。

収縮期血圧 140mmHg以上または拡張期血圧 90mmHg以上の場合を高血圧と診断します。収縮期血圧 160mmHg以上または拡張期血圧 110mmHg以上になると、重症と診断します。

たんぱく尿は、妊婦健診のときの尿検査で2回以上連続して尿たんぱくが出た場合やprotein/creatinine(P/C)比が 0.3mg/mg・Cre以上のときに診断します。さらに詳しい検査は、24時間ためた尿で行います。
妊婦さんに臓器障害が出たり、胎盤機能不全を認めたりした場合は重症と診断します。妊娠34週未満に発症した場合は早発型、妊娠34週以降に発症した場合は遅発型と言います。

 

【お母さんへの影響】

重症になると、脳出血、子癇(けいれん発作)、HELLP症候群(肝機能障害に溶血と血小板減少を伴う病態)、肝臓や腎臓の機能障害などを引き起こすことがあり、命にかかわります。

【赤ちゃんへの影響】

赤ちゃんの発育が悪くなる(胎児発育不全)、胎盤が子宮の壁からはがれて赤ちゃんに酸素が届かなくなる(常位胎盤早期剥離)、赤ちゃんの状態が悪くなる(胎児機能不全)など、場合によっては赤ちゃんが亡くなってしまう(胎児死亡)ことがあります。

【妊娠前のリスク因子】

1.母体年齢・・35歳以上で発症率が高くなります。特に40歳以上。
2.遺伝的要因

・家族歴(妊婦さんのお母さまが妊娠高血圧症候群だと20-40%で発症します)
・高血圧家族歴
・2型糖尿病家族歴

3.高血圧、糖尿病、腎疾患
4.肥満(BMI≧25)、インスリン抵抗性
5.自己免疫疾患

【妊娠に関連したリスク因子】

1.初めての妊娠
2.前回の妊娠で妊娠高血圧症候群だった、特に早発型・重症
3.前回の妊娠から5年以上経っている
4.妊娠初期の段階で、血圧が高め(正常高値血圧:収縮期血圧130-139/拡張期血圧80-89 mmHg)
5.多胎妊娠(双子など)
6.妊娠中の尿路感染症、歯周病

【妊娠高血圧の治療】

まずは安静と食事療法を行い、不十分な場合は内服薬を投与します。重症の場合は入院が必要となり、けいれん予防のお薬や血圧を下げるお薬を使うことがありますが、急激に血圧を下げると赤ちゃんの状態が悪くなることがあり、慎重に投与します。また、妊娠を続けることが妊婦さんと赤ちゃんのためによくないと判断した場合は、たとえ早産であっても分娩にせざるを得なくなります。
通常、出産後はお母さんの症状は急速に良くなります。ただし重症化した方は、出産後も高血圧や蛋白尿が持続することがあり、フォローアップが大切です。

 

【出産後】

出産してから数週間で大半の方は症状がなくなりますが、将来的に妊娠高血圧症候群の方は、そうでない方と比べて、数倍も生活習慣病を発症しやすいことがわかっています。
高血圧(3.3倍)、心血管疾患(2.3倍)、腎臓疾患(4.9倍)などは命にかかわるこわい病気ですが、生活習慣に気をつけることで発症リスクを下げることが期待できます。

そこで当院では、産後ケアの一環として妊娠高血圧症候群と診断された方が長期的に快適に過ごせるように、生活習慣病予防のために年に1回の定期検診をお勧めしております(HDPフォローアップ外来)。もし、血圧や検査結果の値に異常があればすぐに内科に相談できますので、病気が進行する前の対策が可能となります。ご希望の方には同日、子宮がん検診や子宮・卵巣超音波検査も行います。

また、妊娠時のご年齢が高い方は妊娠高血圧症候群になりやすい傾向があります。出産後のホルモン変化やストレスで更年期障害を発症する方もいらっしゃいますので、気になる症状のある方は是非ご相談ください。

【HDPフォローアップ外来受診時の内容】

①血圧測定
②身長・体重測定
③血液検査(血糖、肝・腎機能、コレステロールなと)
④尿検査
⑤子宮がん検診、卵巣超音波(ご希望の方)
⑥産後の疲れ、月経に関するお悩み、更年期障害など何でもご相談ください

                           
記事監修院長 杉森 弥生

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記事監修村川 裕子

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