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不育症


妊娠はするけれども、流産・死産を繰り返して結果的に子供を持てない場合、不育症と呼びます。2回連続した流産を反復流産、3回以上連続した流産を習慣流産と言い、不育症はより広い意味で用いられています。1回の流産の頻度は10~15%で、2 回以上の流産は4.2%、3 回以上の流産は0.88%と報告されています。日本、アメリカ、ヨーロッパでは2回以上の流産・死産があれば不育症と診断し、原因を探索することを推奨しています。また、1人目を正常に分娩しても、2人目と3人目が続けて流産・死産になった場合は続発性不育症として検査をする場合があります。なお、日本では妊娠反応は陽性になっても子宮内に胎嚢(赤ちゃんが中で育つ袋)が見えずに終わる生化学的妊娠は流産に含まれません。

不育症のリスク因子として挙げられているのが子宮形態異常、抗リン脂質抗体症候群、カップル(流産した赤ちゃんの両親)どちらかの染色体異常で、不育症の三大因子とされています。その他、甲状腺などの内分泌代謝異常や、血液凝固因子異常があります。子宮形態異常のうち中隔子宮は流産しやすいことがわかっており、手術をすると出生率が上がるという報告があります。抗リン脂質抗体症候群は自己抗体ができることによって血液が固まりやすくなる病気で、血液を固まりにくくするお薬で治療します。夫婦染色体検査については、根治的治療ではありませんが体外受精や顕微授精の方であれば、着床前診断という方法があります。

ただ、不育症の半分以上の方は原因がわからず、確立した治療法もありません。原因不明流産では、流産した赤ちゃんに染色体異常が多いという報告がありますし、不妊症と同様に母親の年齢が上がると流産の確率も上がることもわかっています。

それでも不育症の検査や診断を行う理由は、カップルの精神的・心理的支援を行ってできるだけ不安を取り除くことにあります。流産や死産は1回の経験でも大変つらいものですが、繰り返すことはさらに精神的に大きな苦痛を与えます。流産・死産と向き合ったり乗り越えたりして、次の妊娠に対して前向きになれるようにサポートしていきたいと思います。

不育症の治療法の一つにテンダーラビングケア(Tender Loving Care; TLC)があります。直訳すると、「優しさと愛でいたわる」となります。通常、妊娠して子宮内に胎嚢が確認されると次の診察は2週間以上先になり、一番不安な時期に診察を受けられなくなります。当院では、不安がある方には、少なくとも週に1回の超音波検査を妊娠10週前後まで行います。薬は特に使わず超音波による診察を行うのみですが、TLCにより赤ちゃんが産める確率が高まったという報告もあります。

                           
記事監修院長 杉森 弥生

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記事監修村川 裕子

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